零という名は

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零という名は

僕の名前は一。 僕は嫉妬している。 君に嫉妬している。 零…君はなぜそんなに美しいのだ。 始まりの零。 何故君は存在したのだ? 数字は0~9だ。 君さえ居なければ1~9だっただろう。 だが違う。 断じて違う! 1~9なら次は11だ。 零。 君が居るから10なんだ。 11じゃ駄目なんだ。 10というのが美しい。 10は十。 11は十一。 見苦しい…十さんの隣にいる僕が見苦しい! だが、零は何処にいても美しい。 100になっても百。 1000にはっても千。 でも10000になると一万。 どうだ、零! 一万になると《一》万だ! 100000は十万。 1000000は百万。 10000000は千万。 100000000でようやく《一》億だ。 駄目だ…やなり勝てない…。 零…君の美しさは、始まりなのに消える尊さ。 零以外の何処に君が存在するのだ? …違う! 消えているんじゃない。 シンクロしているのだ…。 0だけが零。 10は十。 0から先、君はもういないが、常に存在している。 0以外は自分を主張しないのに、目立っているその存在感。 素晴らしい…僕には真似できない。 零…君だけだよ…そんなことが出来るのは…。 僕は君に嫉妬している。 嫉妬している? いや、違う。 この気持ちは…好きに似ている。 0の隣は1。 僕はいつも君を見ている。 そして支えられる存在になりたい。 本当はそう思ってるんだ。 零…僕は君になりたい。 0+0=0 0-0=0 駄目だ…美し過ぎる…もう見ていられない…。 !? いや、ちょっと待て! 1-1=0じゃないか!! 零…僕は君になれるみたいだ。 君は僕になれない…だが僕は君になれる! でも、もう勝ち負けじゃない。 零…君になれる事が嬉しいよ…。 僕と一緒になろう。 そうして零と一はずっと隣同士。 ずっと一緒だ。 なぁ零…僕と結婚してくれないか…? 「なーに長々ボソボソいってんのよ!」 零が僕の顔にビンタをした。 「男ならビシッといいなさいよ、ビシッと!」 幼馴染の零がまくし立てる。 「じゃあシンプルに言ったらいいんですか? じゃあ結婚して下さいよ!」 もうヤケクソだ。 「……いいよ」 ドキッ。 それから一はずっと零の隣に入れたとさ。
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