紙幣

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 私の知人にMさんという男がいる。これは彼から聞いた話である。  当時大学生だったMさんは、ゼミの仲間である川田(仮名)を部屋に招き、酒を飲みながら朝までテレビゲームをするのが週末の恒例行事になっていた。  見知らぬ女子とコンパするよりも、気心の知れた友達と過ごすほうが、よっぽど楽しい充実した時間を過ごせると思っていた。  その日もコンビニでチューハイとお菓子を買い準備万端・・・・・・のはずだった。ある一つを除いて。  買い物をした際に受けとったお釣りの中に、落書きされた千円札が混ざっていたのである。隅の余白部分に090から始まる電話番号が書かれていた。それはありふれた男子学生の日常に突如投げ込まれた異物だった。  Mさんが眉間にしわを寄せながらその紙幣を広げると、川田は面白がり「電話してみようぜ?」と笑顔で勧めてくるのだった。 「絶対ヤバイだろ。紙幣をメモ代わりに使うやつなんてろくな人生歩んでいないからな」と、Mさんは拒否した。 「闇金の番号かな?」 「そのたぐいだろうな」  一度抱いてしまった興味は簡単に消せるものではなく、非通知設定にして、かつ川田が自分の携帯を使って電話するということで折り合いをつけることになった。
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