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就活生
「次の方ー。えー赤間善太さん、お入りください。……赤間さーん?」
汗だくで待合室に入るとちょうど名前を呼ばれたところだった。結局、信号の色が変わるのを待って全速力で面接会場へ駆け込むことに決めたのだった。間に合って良かった。
黒いスーツに身を包み、書類のバインダーを持った女性がきょろきょろとしている。
「はいっ!ここにっ!ここにおります!」
手に持ったハンカチで出来るだけ汗を拭い、前へ進み出た。
「失礼いたします!」
◆
「では、これにて面接は終わりです。お疲れ様でした。」
3人並んだ面接官のうち中央に座る眼鏡の男性が労いの言葉をかけた。
「ありがとうございました!」
そう言うと善太は椅子から立ち上がり深々と頭を下げた。そしてきっちりとした足取りで部屋を出て、受付の女性にも丁寧に挨拶をし、事故に遭わないよう細心の注意を払って長い道のりを帰宅した。
「あ~~~~!!!絶対駄目だああああ!!!」
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