『指』

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 指が落ちていた。  それも――道の、ど真ん中に。  なんでこんなところに指が。  それも、一本だけ。  辺りを見回しても、落ちてる指はそれ一つだけ。  誰のだろう?  誰が落としたんだろう?  落とし物はおまわりさんに届けなきゃ。  そう思って拾おうとした。    指が逃げた。  びっくりした。  でも、おまわりさんの所に持って行かなきゃ。  つかまえなきゃ。 「待って」  指を追いかけた。  追いかけると、指は逃げた。  追いかける。  指が逃げる。  追いかける。  指が逃げる。  追いかける。  指が逃げる。  追いかける。  指が逃げる。  追いかける。  指が逃げる。  追いかける。  指が逃げる。  追いかける。  指が――  ――止まった。  あぁ、やっとつかまえられる。  そう思って指に近づいて――気付いた。  逃げなくなった指の周りに、何か落ちている。  よく見ると――  指、指、塊、指、塊、指、指、塊、塊、塊。  指と、指じゃないものが散らばっていた。  何、これ。  なんでこんなにたくさん指が。  一歩、近づいた。  瞬間。  散らばっていた指と塊が集まって――一つの『手』になった。  あっけに取られているうちにその『手』はこちらに飛んできた。  顔を。  顔面をわしづかみにされる。 「ぎ――ぅ」  あまりのことに悲鳴を上げようとしたが『手』の平に口を押さえられていて叫べない。  嫌。嫌。嫌。嫌。嫌。嫌。嫌。嫌。嫌。嫌。嫌。嫌。嫌。嫌。嫌。嫌。嫌。嫌。嫌。嫌。  怖いのと焦るのとで混乱して暴れた。  暴れても、『手』は顔から離れない。  ぐんっ。  前方に引っ張られた。 「ひ――ぅ」  反射的に足に力を入れて踏ん張る。  連れていかれる。  嫌だ。  誰か。  誰か誰か誰か誰か誰か誰か誰か誰か誰か誰か。  誰か助けて―――― 「――――っ!」  そこで目が覚めた。
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