276人が本棚に入れています
本棚に追加
/306ページ
大将船である安宅は、長さ百尺(約三十メートル)、左右の舷側に五十ずつ、計百挺の櫓。
漕ぎ手と戦闘員を合わせて百八十名が乗りこむことのできる木造の大型船である。
この安宅を初め、曽我水軍の規模は軍船、物資を運ぶ輸送船など、大小あわせて五十隻の船団である。
「しかし、草薙の方々は大変ですな」
「ええ、この事態は考えてもみませんでした」
眉を曇らせ、隼人は甲板に出ている九条の将兵たちに視線を巡らせた。共に乗りこんだ多くの者が青白い顔をして、ぐったりと座りこんでいる。
船酔い、だった。
海に面してはいても、水軍など持たない草薙の将兵である。船に慣れていない者がほとんどで、皆、ばたばたと船酔いにやられてしまったのだ。
「まあ、そのうち慣れて楽になるとは思いますが……」
兼光が気の毒そうにつぶやいた。
最初のコメントを投稿しよう!