第一章 平穏

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 まばたきして瞳をこらすと、隣で隼人(はやと)が心配げにこちらを見つめている。  首の後ろで簡単に髪を結んだ、聡明そうな面ざし。  年はまだ十七だが、亡き父の跡を継いだ草薙(くさなぎ)の地の領主である。  見慣れた城の一室。  額に浮かぶ汗を手でぬぐいながら、藤音はほうっと息をついた。 「どうした? うなされていたようだけど」  夢をみました、と藤音はぽつりと答えた 「申し訳ございません。わたくしのせいで隼人さままで起こしてしまって……」 「そんなことは気にしないでいいけど、どんな夢?」 「……(いくさ)の夢でございます」  夢と片づけてしまうには、あまりに生々しい情景。  胸はまだ恐怖に波打っている。  藤音のそんな言葉に隼人の表情がわずかに曇ったが、すぐに微笑して、 「ただの悪い夢だよ」  安心させるように藤音の肩を抱き寄せる。 「戦などもう起こらない。こうして藤音がわたしのもとへ嫁いできてくれたのだから」
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