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ひとしきり笑うと、桜花は少し真面目な顔つきになった。
「気をつけないといけないわね。お城の中ですもの、いつ、どこで誰に会うかわからないわ」
「同感だな」
「でも、よかった。お許しがいただけて」
隼人のことだから理不尽な反対はされまいとは思っていたが、それでも許可を得るまでは多少不安だったのだ。
「殿のお許しも得たし、あとは後任の者を探せばいいだけか」
殺風景な部屋の中を眺めながら、まだあるわ、と桜花が言う。
「まだ?」
「ええ、住むところが必要だわ」
今は二人とも城住まいだが、祝言を挙げて所帯を持つとなると、やはり誰にも遠慮のいらない家が欲しい。
ふむ、と考えこむ伊織に向かって、
「えっと、伊織、もしあなたさえよければ、城下にある天宮の屋敷が空いているのだけど……」
「天宮の?」
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