第一章 平穏

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 ひとしきり笑うと、桜花は少し真面目な顔つきになった。 「気をつけないといけないわね。お城の中ですもの、いつ、どこで誰に会うかわからないわ」 「同感だな」 「でも、よかった。お許しがいただけて」  隼人のことだから理不尽な反対はされまいとは思っていたが、それでも許可を得るまでは多少不安だったのだ。 「殿のお許しも得たし、あとは後任の者を探せばいいだけか」  殺風景な部屋の中を眺めながら、まだあるわ、と桜花が言う。 「まだ?」 「ええ、住むところが必要だわ」  今は二人とも城住まいだが、祝言を挙げて所帯を持つとなると、やはり誰にも遠慮のいらない家が欲しい。  ふむ、と考えこむ伊織に向かって、 「えっと、伊織、もしあなたさえよければ、城下にある天宮の屋敷が空いているのだけど……」 「天宮の?」
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