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第二章 蘇芳(すおう)
領主夫妻に辞意を打ち明けてから、ひと月近く。
桜花は浮かない顔で城内の社の手入れをしていた。
実は、予想もしていなかった問題が生じていた。
後任の者がなかなか決まらないのだ。
祖父はあちこち探してくれているのだが、遠縁あたりに話を持っていっても、みな辞退されてしまう。
天宮の家に生まれ育った桜花は、代々そうであったように、九条家に仕えることを当然のように思っていた。
が、他家では直接に主君に仕えるとなると、どうも敷居が高いらしい。
要はごく普通に祭事を執り行える神官か巫女でいいのである。にもかかわらず人材が見つからない。
せっかく許可を得たというのに、今のままでは巫女の座を辞するわけにいかない。
桜花はため息をこぼすと、社の中を布拭きし始めた。
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