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さらに球体を少しだけ回して指さす。
「この小さな島がわたしたちの住んでいる倭国」
大きな球の中、海に浮かんだちっぽけな島は豆粒のようだ。
「こんなに小さな……」
「で、海を隔てた半島が羅紗国。さらにその背後の大国が陵」
藤音は隼人の指し示す国々を眼で追った。
自分たちの住む国は何と小さく、海の向こうには何と大きな国が広がっているのだろう。
「いつかは海を越えて広い世界を見て回りたいと願っている。その時は藤音も一緒に――」
眼を輝かせる隼人に、藤音はこくりとうなずいた。
本当に隼人と世界を見て回れたら、どんなに楽しいだろう。向こう岸の見えない大河や、砂ばかりの大地や、ひっそりとたたずむ遺跡……。
遠慮がちに戸を叩く音が聞こえたのは、二人が飽きずに地球儀を眺めていた時だった。
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