第一章 平穏

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 仕方ない、母君には父から伝えてもらおう。 「伊織どの」  真摯な口調で呼ばれ、我に返ると、向かいでは十耶が深々と頭を下げている。 「まだまだ未熟者なれど、どうか、わが孫娘をよろしく頼みます」  伊織はあわてて自分も深く頭を下げた。 「とんでもございません。未熟者は自分の方。これからもどうぞお導きください。生涯かけて桜花を大切にいたします」  頭を下げあう二人のそばで桜花はもじもじしていた。これではこそばゆくて身の置き所がない。 「あの、おじいさま……」  話を進めるべく桜花に声をかけられ、やっと祖父が面を上げ、続いて伊織も顔を上げる。 「以前、嫁ぐためには巫女の座を辞さなければならない、とうかがいましたが、具体的にはどのようにすればよろしいのでしょうか」
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