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仕方ない、母君には父から伝えてもらおう。
「伊織どの」
真摯な口調で呼ばれ、我に返ると、向かいでは十耶が深々と頭を下げている。
「まだまだ未熟者なれど、どうか、わが孫娘をよろしく頼みます」
伊織はあわてて自分も深く頭を下げた。
「とんでもございません。未熟者は自分の方。これからもどうぞお導きください。生涯かけて桜花を大切にいたします」
頭を下げあう二人のそばで桜花はもじもじしていた。これではこそばゆくて身の置き所がない。
「あの、おじいさま……」
話を進めるべく桜花に声をかけられ、やっと祖父が面を上げ、続いて伊織も顔を上げる。
「以前、嫁ぐためには巫女の座を辞さなければならない、とうかがいましたが、具体的にはどのようにすればよろしいのでしょうか」
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