第五章 羅紗(らしゃ)

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「ご挨拶が遅れて申し訳ございません。曽我さまにはこの度の羅紗行きに格別のお力添えをいただき、深く感謝いたします。  われらは九条軍の副将を務める桐生元基が息子。わたくしは兄の和臣、隣は弟の伊織。殿の護衛の任についております」 「これは丁寧な挨拶、いたみいります。隼人どのはよき家臣をお持ちですな。して、止められぬとは、いかなる意味で?」  隼人が姿を消した階段の方に視線を投げ、伊織が口を開く。 「わが殿は好奇心が刀を差して歩いているような方。昔から何でも自分でやってみないと気がすまない性質(たち)でございまして……。  こちらの方々のご迷惑とならぬよう、われらも気を配りますので、どうぞしばらくのご辛抱を」 「なるほど、いかにも隼人どのらしいですな」  恐縮する家臣二人の前で兼光は豪快に笑う。 「心配ですので、船底の様子を見てまいります」 「では、わしもご一緒いたそう。隼人どのがどう櫓を操るか、いささか興味がありますでな」 「船に関しては、ずぶの素人ゆえ、すんなりとはいかないと存じますが」
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