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第八章 宣言
家臣たちの間で隼人の後継者問題が持ち上がっているとは露知らず、藤音は遠海の浜で粥を作り続けていた。
いつものように鍋に米と水を入れ、弱火でぐつぐつと煮込んでいく。すっかり日課となった作業だ。
だが、その日はいつもと違っていた。
朝からあまり体調は良くなかったのだが、米を煮る匂いをかいでいるうちに、胃のあたりがむかついて気分が悪くなってしまったのだ。
「如月」
藤音は小声で近くにいる如月を呼んだ。自分も大鍋をかき回していた如月が振り返る。
「何でございましょう」
藤音の蒼白な顔を見て、如月は息を呑んだ。
「いかがなさいました!? 藤音さま」
「何だか、気分が悪くて……。この鍋を頼めるかしら」
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