第三章 嵐

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「ついては桜花にも要請があった」 「わたしに?」  桜花は大きくまばたきした。戦えもしない自分に何をしろというのか。 「九条家に仕えし巫女は舞いの名手。出陣の際には戦勝祈願の舞いを奉納せよ、との意向だ」  どう返答してよいか、桜花はわからなかった。  いったい、どんな勝利を祈れと?  そして下された命令は二人にとって重い枷となった。  つまり桜花は出陣の時まで巫女であり続けなければならない。  後任の者が見つかっても、すぐには巫女の座を降りられない。祝言を挙げて伊織と結ばれることはできないのだ。  かといって断るなどできるはずもなかった。拒絶すれば隼人の立場を悪くしてしまう。  桜花はすがるように伊織を見上げ、問いかけた。 「ねえ、教えて。何のための(いくさ)なの? 羅紗国が攻めてきたわけでもないのに、どうしてわざわざ海を越えて、そこに住む人たちを殺しに行くの……?」
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