第四章 出陣

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 だが桜花は今も九条家に仕える巫女であり、しかも明日は戦勝祈願の舞いを奉納するという大役がある。それを忘れてはならない。  そのことを頭に叩きこんだ上で、伊織は静かに襖を閉め、桜花をふわりと抱き寄せた。 「もちろんだ。今夜はずっとここにいるといい」  出発の仕度はすっかり整っているし、伊織も明日の朝までは、たいしてやることもない。  二人は手を取りあって子供の頃の話をしたり、未だ決まらない桜花の後任の者について考えたりしているうちに夜はふけてゆく。  と、遅ればせながら伊織はある事実に気づいた。  普段は伊織がひとりで使っている簡素な部屋だ。当たり前だが寝具などひとつしかない。  この状況は、どうしたものか。  やはりここは潔く桜花に譲るべきだろう。
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