幼馴染との練習

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「私が騙すのは貴方だけ」 「凄いや。心機一転して清々しいほど奇麗な笑顔で言い放ったよ。しかも結果的に僕に被害が被ってしまうから性質が悪い」 「私は貴方だけを一生涯騙し続ける事を――誓います」 「凄いや。これほど嬉しくない誓いをされたのは生まれて初めての経験だよ。ある意味誇っても良いかもしれない」 「えへへっ」  頬を朱色に染め、照れた表情で自らの髪を撫でる彼女。その姿を見た僕は呆れを通り越して逸材を発見した心境に陥った。もしかすると、常人には理解不能な域に達すると脳が拒絶反応を起こしてなんやかんやで納得してしまう自己防衛機能が携えているのかも知れない。 「それでね。嫉妬の練習をしても良いかな?」 「別に構わないけど具体的にはどうすればいいのさ」 「一般的な嫉妬は何通りかあるけれど、私が練習したいのは可愛い嫉妬です」  可愛い嫉妬。女性が思うであろう可愛い嫉妬は「逢い引きの最中に男性が他の女性を目視してしまった場合」とかだろうか。第三者にて可愛いと判断出来る嫉妬技術を携えている女性が少しばかり怖くなってきたのは何故だろう。  女性特有である生々しい戦いがあると聞いた事がある。しかしながら僕には想像すら出来ない現状。理想と現実は異なると何処かの先代住人か偉人が発言していた。いがみ合いながら狙いを定めた異性へ狙う狩人とも耳にした事がある。  つまりは女性を敵にすると恐ろしい。普通の子と交際して普通の子と結納したいな。あばたもえくぼと思えれば良いではないか。知らない方が幸せな事もあるさ。 「仮に貴方を恋人と想定して話を進めます」 「どうぞ」 「貴方が私より体格が良いと判断出来る、数少ない女性を凝視していると想像します」 「君より体格が良い女性は数多に存在すると思うけど。断崖絶壁を彷彿とさせる君には悲しいけど不可能な想像だと思う」 「……」 「あっ、これは既に嫉妬練習が開始されている感じですか」  彼女から僕を見る目が濁っている。親の仇、世界の全てを憎む、生理的に受け付けないと言った感じだろうか。引き寄せられるような濁りであり、ずっと見ていると不安になってくる。 「小さくありませんし」 「えっ、何が」 「他の雌が異常発達しているだけですし」 「流石に雌扱いは酷い気がするけど?」 「流石に私の扱いも酷い気がしますけど?」 「「……」」
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