幼馴染との練習

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 随分演技派なんだな、彼女は。雰囲気も醸し出せるなんて本格的だ。何だか肌がぴりぴりしてくる程の演技力。演劇部への入部を進めたいが空気を壊す恐れが生じるので口にしない。  ――否。口が勝手に閉ざしているのだ。恐らく自己防衛本能が機能している。 「うん。頬を膨らませながら嫉妬感を漂わせているから上出来だと思うよ」 「可愛い嫉妬になってます?」 「個人的な解釈だけど、可愛い嫉妬に部類されると思うよ。もう練習する必要性は皆無じゃないかな?」 「意外にも私には眠っていた嫉妬の才能が開花されてしまったみたいです。私はこれほど自分に戦慄した過去はありません」 「君って人生愉しそうな思考回路の持ち主だよね。極稀に羨ましいと感じる事があるから色んな意味で畏怖の念を抱くよ」 「では、レベルを上げましょう。嫉妬レベル狂乱です」 「急激に難易度が上昇してるね。僕は狂乱レベルの嫉妬を体験したくないよ」  そんな体験は真っ平御免被る。自らの意思で精神的外傷を負いたいと思える人間が存在するだろうか。そんな事を率先して体験したい人間がいるのであれば完全なる嗜虐嗜好だ。  嗜虐嗜好があるから加虐嗜好が活きて、加虐嗜好があるから嗜虐嗜好が活きる。需要と供給とはこの事なのかも知れない。そう考えると変態世界が認められても可笑しくはないのだろうかと疑問に思う。まぁ、倫理に反するから拒絶されてしまうけど。 「……どうしてっ!?」 「えっ、何が? もう狂乱レベルで荒ぶっているのかい?」 「どうして貴方は私を見てくれないの!?」 「現在進行形で君だけを見ているけど。いや、余り直視したくない程の狂乱だから目を背きたい気持ちはあるけど」  目が血走って声を荒げている人を直視したい人間は居ないと思う。居たらその人は趣味が悪いと思います。  あそこの人荒ぶってるぜ、見に行こうぜと嬉々とした表情をした人物が居たら少しだけ付き合い方を見直した方が良いだろう。 「……ばかっ」 「どうして貶されないといけないのか、僕には理解が追いつかない」 「……寂しかった」 「あっ、この流れはなんだかんだで仲直りして良い感じの雰囲気と判断したよ。やっと締めに突入したのか」 「私だけを……見ていてください。他の雌に目を奪われるくらいなら、私が貴方の目を奪います。物理的に」 「心が病んでないかな? 狂乱ってこれ程まで恐ろしいのかい?」
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