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純の申し出は気持ち的には嬉しいものであったが、萌にとっては現実味がない。 断ればまた支援すると言い兼ねない純に萌は困りどうしようかと思案顔を向けた。
すると、額に軽いキスを落とした純は萌の頭をポンポンと叩く。
「家族になる人の弟を面倒見て何が悪い? 俺は萌と一緒に居たいし、萌が弟を大学に行かせたいと頑張ってるのも知ってる……だから出来ることはしたい」
「純さん……」
それは、萌の夢だった──。
誰にも言ったことはなく、まだ出会ったばかりの純が知っているとも思えないけれど──。
小さい頃からずっと思い続けてきた大きな夢、いつか誰かと家族になること。
テーブルの上で握られた手が、触れた場所から熱を帯びる。
「初めてさ、誰かのことを幸せにしたいと思ったんだ」
目をそらし頬を赤らめた純の表情が、触れる手の熱が、萌に夢ではなく現実だと教えてくれた。
fin
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