はつこい白書

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「うわ……このフロア全部が部屋ってこと……? 凄いなぁ」 美山家事代行サービスがある駅から電車で数駅の場所、急行や特急列車も停まる利用客の多い駅でそこから徒歩数十秒、家から出ないという顧客に必要なのか分からない立地のいい高級マンションは、一階、二階にショッピングモールがあり、マンション住民以外も多く集まっているようだ。 しかし土地柄なのか、桁を間違えているのではと疑ってしまうほど値段の高いスーパー、ブランドショップなどが並んでいるため、萌のような庶民はウィンドウショッピングがいいところである。 萌はゴミ一つ落ちておらずピカピカに磨き上げられた大理石の床を感嘆の思いで見つめながら、マンション住人専用エレベーターで三十階に上がる。 三十階全てが顧客、花菱純(はなびしじゅん)の部屋のようだ。 萌は聡に言われた通り、インターフォンを鳴らさず時間一分前に鍵を開けて部屋に入った。 家主の趣味なのか、黒を基調としたシンプルな部屋は余計なものは一切置いてはおらず、壁に備え付けられた大きな木目調のテレビラック、十人は座れそうなコーナーソファーだけだ。     
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