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クルリと背を向けて収納から掃除機を取り出していると、背後から純の手が伸び収納のドアにトンとつかれた。
純と壁の間に挟まれる体勢で、萌がどうしてよいのやらと戸惑っていると、頭の上から低い声が降ってきた。
「なあ、あんた。 もしかして俺のこと知らない?」
「え?」
質問の意図も意味も全く分からずに掃除機を持ったまま萌が振り向くと、近付けば食べられてしまいそうな獰猛な目付きに仄かに艶を滲ませて純が前髪をかきあげた。
壁に付かれた腕は、家からあまり出ないという言葉からは想像もつかない程逞しく、身体中に余計な部分など一切ない均整の取れた身体つきをしていた。
部屋着だからだろうか、シンプルな黒のTシャツにデニムという出で立ちであったが、それが寧ろ筋だった厚みのある胸を強調させスタイルの良さを際立たせている。
萌があまりにもジッと見つめ過ぎたのか、純は小さく舌打ちし壁についた手を離す。
純の手が離れていったことでホッと肩から力を抜き、どうやら自分は緊張していたらしいと知るが、妙にいつもよりも体温が高く胸がドキドキと早鐘を打っているのは何故だろう。
「あ……あの、もうよろしいですか?」
「……ああ」
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