はつこい白書

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それは、唯一の家族である、弟透(とおる)の存在が大きいだろう。 守るべき人がいることは、萌を強くしてくれた。 萌と透がまだほんの小さい頃……透は生まれたばかり、萌もまだ二歳だった。 人から聞いた話では、透を生んですぐ両親が亡くなったらしい。 大型トラックが横転したことによる、かなりの人数を巻き込む事故で、病院に運ばれる救急車の中で二人とも息を引き取ったそうだ。 たまたま、隣の家の夫婦に預けられていた萌と透は無事であったが、いつまで経っても連絡一つなく帰って来ない二人に何かあったのではと、夫婦も心配したそうだ。 両親は親戚もなく病院側も連絡を取るべき人が見つけられなかったのだが、事故がテレビで放送され隣の家の夫婦が警察に連絡を取ったことで、やっと病院へと行くことが出来た。 萌と透も両親の遺体と対面したということだが、人間の死という概念も分かっていない萌たちにはきっと何のことだが分からなかっただろうし、残念ながらその辺りの記憶も一切なかった。 その後、たんぽぽという児童養護施設に預けられることになり、高校を卒業するまでたんぽぽが萌にとって帰るべき家となった。     
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