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萌がここで働いていた時は、仕事をさせていると割り切っていたのか萌の休憩を邪魔しないように思っていたのか、仕事部屋に昼食を持って行っていた。
「ごめん。 仕事に入るとなかなか手が離せないから。 美山さんから聞いたんでしょ?」
綺麗な所作で昼食を口に運びながら、純が告げる。 純が言う聞いたとは、萌の両親とのことではなく、仕事のことだ。 しかし、何かを勘付いているであろう純に隠し事はしたくなく、萌は聡から聞いたことの全てを話した。
純からはやはり、そうと一言だけの返しであったが萌もそれだけでよかった。
「でも……嬉しかったです。 純さんが、そこまで考えてくれてたこと」
「そう? 俺、結構嫉妬深いから、覚悟した方がいいかもよ?」
次の言葉を紡ぐ前に、純の手が萌の顎を掴み唇を塞がれた。 流されるがまま唇を受け止めていれば、仕事も手につかなくなりそうで、萌は必死に純を押し留める。
「ん……っ、ぁ、はぁ……仕事中、です」
「助かってるのは本当だけど、俺は仕事だとは思ってない。 だから、弟が二十歳になったら仕事辞めて? 俺は萌と一緒にここで暮らしたい」
「え……?」
透が二十歳になったとしても、透が大学を出て働くまでの期間萌が仕送りする気でいたのだ。
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