1.旅のはじまり

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1.旅のはじまり

「あああっ!」  古賀磨美江(こがすみえ)、笑顔と愛想は絶やさない、百貨店販売員26歳は奇声をあげた。 「どしたの?」  足早に先頭を歩いていた湯檜曽梨沙子(ゆびそりさこ)、行動力と気合が勝負のシステム管理者(見習い)、同じく26歳が振り向く。 「時計置いてきた。キョウカの部屋に。……どうしよう、アッシュになめまわされる」  うろたえるスミエに、キョウカが答えた、 「あー大丈夫、窓枠に置いといたやつでしょ?窓が開いてなければ、あそこには昇らないから」  ……と、昨夜の宿主、菊理木葉花(くくりきょうか)。同じく26歳、論理性と正確さが強み、"頭の悪い奴は嫌い"がモットーの経理部員。アッシュというのは彼女の飼い猫の名前だ。  続けて、 「あ」  と、キョウカ。 「私もケータイ置いてきた」 「と、いうことは、時計はわたしのケータイだけか」  リサコが答える。 「いや、ケータイならアタシも持ってるし」  これはスミエ。 「ま、大丈夫でしょ、時計なんてどこかしらあるし、それより、時間!電車きちゃうよ」     
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