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新宿駅から、思っていたより随分早くバスターミナルについた三人だったが、
「ゴメン、ちょっとトイレ」
と、口を揃えて、スミエとキョウカは、リサコを残して、センターのターミナルへ向かった……が。
「遅い……」
恐らくは、預かっているバックの中に入れたままになっているであろう、スミエの携帯電話に、無駄だとは思うが念のため、と鳴らしたコールを切って、リサコがつぶやく。出発時間は9時40分。先日時報であわせたばかりのリサコの携帯電話の時計はすでに9時42分を指している。車掌に理由を話して待ってもらってはいるが、あと3分も過ぎたらどうなるかわからない。がっしりとしたガタイとはうらはらに、以外と小心なリサコは、かなりあせっていた。はたして、二人の姿がようやく見えると、走るでなく、ゆっくりと向かってくる。あわてて二人を手を振ってせかす。
「早くー。出発だってば!!」
リサコの動きに気づいて、ようやく二人が小走りになった。と、もう一人、バスまで駆け足で向かってくる男がいた。身長はかなり高い。顔の方も、俳優? タレント? も、かくやの男前であった。
結局、三人がバスにたどり着いたのはほぼ同時だった。
「遅い!!どこまでトイレに行ってたの!?」
乗車券を渡しながらリサコが問い詰める。
「あれ?出発って45分じゃなかった?」
きょとんとして、スミエが答えた。
「あーゴメン、ゴメン、でもさー早くしないと、バス出ちゃうんでしょ?」
残りの券をぱっと取って、キョウカが乗りこんだ。二人がけの席が車両の両側に並んだ車内はすでにほぼ満席だった。三人の席は幸運にも、一番前だったので、すぐに席につくことができた。リサコとキョウカが並んで一番前に座り、そのすぐ後ろの席に座ったスミエの横にきたのは、さっきの遅れてきた男であった。駅から息をきらせてきたらしい彼は、二人がトイレに行っていなかったら乗り遅れていたに違いない。
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