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「やー助かりました。間に合わないかと思いましたよ」
親しげに隣の席のスミエに話し掛けようと、スミエの顔を見て、彼は一瞬はっとした。それは、よく見知った人間を偶然みつけたような驚きだった。しかし、それが見間違いであることに気づき、元の愛想のよさそうな笑顔に戻った。
気づいているのかいないのか、生来の人なつっこさで、にこやかにスミエが問いかける。
「お一人でどちらまで行かれるんですか?」
「いや、帰省ですよ。実家が……知ってるかな?鳴沢っていう、富士山の麓なんで」
「あ、そうなんですか」
「車を修理に出しているから……、長距離バスは久しぶりです。貴女は?旅行ですか?」
「ええ……」
スミエが少し言いかけて、前の席に座っていた二人が立ち上がり、シートにあごをのせるようにして、後部座席の話に加わってきた。
「はーい。同行者1でーす」
右手をひらひらさせて調子良くリサコが言い。
「その2です」
きっぱりとキョウカが続く。
急に話し相手が増えた事に驚きつつも、彼は気をとりなおして言った。
「そういえば、自己紹介がまだでしたね。俺、仲村秀二といいます。OA機器類の営業やってます。よろしく」
「「「よろしくー♪」」」
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