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それまで俯けていた顔を上げはしたものの、マイケルの表情に覇気はない。その様子に、まだ付き合いの浅いダニエルは困ったような顔を部下であるオフィサーのベンへと向けた。ベンは、マイケルがこの船でチーフオフィサーをしていた時からの付き合いがあるとダニエルは聞いている。
他の船舶会社でキャプテンを務め、入社一年目にしてチーフオフィサーというポストに就いたダニエルの視線を受けて、ベンは苦笑を漏らしながらマイケルの肩を優しく叩いた。
「マイク、真面目なお前の気持ちは分かるが、そんな状態でブリッジにいられる方がクルーも仕事が手につかん。ダニエルの言う通り、今日はもう部屋へ戻れ」
「ベン…」
「大丈夫だ。何か不測の事態が起きたのかもしれんが、キングはちゃんと戻ってくるさ。それに、この船の航海士たちの有能さは、お前も知ってるだろう?」
安心しろと、そういって肩を叩くベンに、マイケルは力なく微笑む事しか出来なかった。
マイケルの恋人であるクリストファーは、この船でカジノディーラーをしているのだが、その彼が、約束の日を過ぎて二日も戻ってきていないのである。
クリストファー(Christopher)略称はクリス、年齢は三十九歳。身長、百八十四センチ。体重、六十九キロ。国籍はフランス。
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