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肩まである赤茶の髪は緩く弧を描き、グレーの瞳をしている。大型客船『Queen of the Seas (クイーン・オブ・ザ・シーズ)』のカジノディーラーだ。ゲームマネージャーである彼は基本的にすべての業務をこなすが、通常の担当はカード。仲間内でキングという愛称で呼ばれる彼の本職はマフィアだ。どこのモデルかと見紛う美しい顔立ちをしているが、その躰には数えきれないほどの古傷を纏っている。
もちろん、クリストファーがマフィアだという事を知る者は船の中ではマイケルと、セキュリティーやメディカルスタッフの一部の人間を除いては他に居ない。
というのも、『Queen of the Seas (クイーン・オブ・ザ・シーズ)』を所有する会社の大元がクリストファーの所属する組織であり、セキュリティー部門はすべてがその息のかかった人間で構成されているのである。
だからと言って『Queen of the Seas (クイーン・オブ・ザ・シーズ)』の評判が悪いかと言えば、まったくそんな事はない。それどころか、世界屈指の豪華客船としてその名を馳せている。
それもこれも、マイケルをはじめとする優秀なクルーやスタッフたちの努力の賜物である事は言うまでもなかった。
ともあれ、そんな船のキャプテンであるマイケルが、この二日使い物にならないほど落ち込んでいる。その理由は、恋人がフランスから船へ戻ってきていないというその一点に尽きた。
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