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「××月××日午後、◯◯地裁にて祖父を殺害した――――少年の裁判が行われた。被告人の精神鑑定が終わり、その結果から責任能力はあると検察が判断し起訴した。
「被告人は一貫して容疑を否認しているが、検察側は何度も何度もしつこくナイフで刺すなどの犯行から祖父への恨みによる犯行として、懲役十年を求刑している。
「弁護士側は少年の精神状態が逮捕前から、常にとても不安定である事を理由に精神鑑定のやり直しを要求。責任能力の有無を争っていく姿勢を見せている」
新聞の中程にそんな記事が乗っていた。一時は世間を騒がせた事件も裁判が行われる頃には大半が忘れ去られてしまうものだ。
「ねぇ、あなた」
老婆は宙を見て話し掛ける。
「これで、二人きりね。暫くは」
何処を見ているのか、瞳は宙をさ迷って…………にっこりと、あの日の笑顔を浮かべた。
もう、一人きりになってしまうと言うのに。
(終)
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