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狭い独り暮らし用のアパートには、物がごちゃごちゃと溢れていた。
ベッド上にはいくつもの女物の服が並べられ、今日は私を着て欲しいと主張しているし、雑誌やら教科書やらが床に散らばり、テーブルの上には食事をし終えたばかりの食器が乾いていくままになっていた。
点けっぱなしのテレビからは、下世話なワイドショーの笑い声。
「だから、言ったじゃない」
声は呆れたような、憐れむようなそんな響きが混ざっていた。
カチャカチャと食器が擦れる音に、水の流れる音。
スマホを肩と顎で上手に保持して、女は置きっぱなしの食器を取りつつ、テレビに目をやる。
「あーはいはい。御託は分かったから」
ここ数日ワイドショーを賑やかす、ある事件についてのやり取りを内心鼻で笑いながら、
「だって思ってたもん。ずっと。あいつは危ないって」
「え? 従兄弟だからよ。
「だから、あんたがお熱だった時も反対し続けた。
「ま、当たりだったよねー。とうとうやらかしたもの。あいつ。
「え? あー大丈夫大丈夫。私の方には何にもねー…………まぁ、実家は大変みたい。母さんからノイローゼになりそうってLINE来たしー。
「あははは。本当よねー。人の迷惑も考えろって話よ。ホントに、
「え? あーそうね。悲しくはないよ。
「あいつはあいつで…………だけど、それ以上にあの爺はクソだったし。
「死んで、当然よ。
「その事だけはあいつに感謝してるかも」
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