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ごくごく当たり前な高校の白い壁が、夕日に染められてピンクのような、赤のようなそんな曖昧な色をしていた。
部活終わりの生徒達がざわざわと、ある者は疲れを抱えながら、ある者は空腹を抱えながら、またある者は帰ってからやるべき事に対しての不満と気怠さを覚えながら、一時の友人との語らいの時間を過ごしていた。
そこに空気を読まない黒い塊を持った人間と、なんだかモコモコした棒を持った人間と、マイク片手に意気揚々と片っ端から生徒達を捕まえて、話しかける人間がいなければ、それは何でもない日常だったのに。
「容疑者についてお話を聞かせてください」
その呼び掛けに、沈黙を返したり、嘲りを返したり、饒舌に答えを返したりして、人波は流れていく。
「ああ、いっすよ」
「腐れ縁…………ですかね。あいつとは小学校から同じなんで」
「人柄、ねぇ…………フツーっすよ。なんも変哲もない…………寧ろ地味な位じゃないっすか?」
「地味で、大人しくて、何処にでもいそうなこれと言って特徴がないのが、あいつの特徴かなぁ…………」
「あー、いや…………まったく。そんな事する奴には見えないどころか、フツーに良い奴でしたよ。忘れ物したら貸してくれるし、面倒見も良くて分かんない所教えてくれたりしたし」
「あーまぁ…………報道で知ったんですけど、まだ、なんつーか、現実感ってものがなくて驚くとかより、ワケわかんないつーか」
「そういう話っすよね。精神疾患ね…………確かにあいつの家厳しそうだったけど…………あーでも、変な所はありましたよ」
「あいつ…………、視えるんですよ」
「え…………あー…………なんつーか、目に見えないもの…………そう、ユーレー的な…………」
「いや、小さい頃なんすけど、良く何もいないよーな所で丁寧に挨拶してて、話を聞くと此処にこういう人がいるって言われて…………それが嘘ではないなーって感じで」
「まぁ中学上がってからはそんな事全くなくなっちまったんすけどね」
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