道端にて…………とある邸宅の前

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「え? ああ、息子さんがどうして出て行ったか?」 「息子さんがご結婚なさるとき、まるで政略結婚みたいに良いとこのお嬢様ととご主人が考えていたみたいで…………でも、心に決めた人がいたんでしょうね。駆け落ちをしたんです」 「会社も何も放り出して、だったみたいで…………それから没落したとか。しかも、事故で息子さん夫婦はお亡くなりになって、まだ三才位のお子さんがあのお宅に引き取られたのが…………何年前でしたっけねぇ…………」 「随分、ご主人は厳しくあたっていましたよ。小さい頃は叱責の声と、泣き声が良く聞こえて来ましたし、追い出されて泣いてるあの子も良く見ました」 「きちんとした子でした…………奥さんのお陰でしょうね。でも、あの子の立場だったらご主人を恨んだでしょうね…………」 「私、一回聞いちゃったんです」 「『お前は呪われた、穢らわしい子だ。仕方なくあの馬鹿ものの形見だからおいてやってるだけだ。あんまりふざけた事を抜かすならこの家にはもう、置かん!!』」 「そう怒鳴って追い出すのを」 「奥さまが暫くして出てくるまで、あの子は放心状態で…………」 「精神を? まぁ無理はないでしょう…………あんな事を言う人と一緒に暮らしてたのだもの。同情してしまうわ」
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