第五話

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第五話

 千晴は、満足そうにお腹をなでた。メリザの隣を歩きながら、先ほど食べたものを思い出す。美しく飾られたすべての料理がおいしかったのだ。  「メリザさん、本当においしかったです。ありがとうございます」  それはよかった、と微笑むメリザにつられ、千晴も笑う。その時、千晴の横を見慣れない髪色の人が通り過ぎた。その長い髪は美しく、夜の明かりの中輝いている。思わずその後ろ姿に見とれていると、メリザに声を掛けられた。  「千晴ちゃん、どうかした?」  「いえ、何も。ただ、すごく綺麗な銀髪だったので」  「銀髪?ああ、悪魔がいたんだね」  「あくま?」  千晴はその言葉に驚いた。  『異世界には、悪魔と言われる種族が存在する。  銀髪を特徴としており、悪魔は皆、丈夫で、高い戦闘能力を持つ。また残忍性を併せ持ち、歴史の中で、多くの人間が殺されてきた、恐ろしい存在。  近年、その餌食となったのが”フランジスタ王国”。王室のものは皆、悪魔に殺されており、いまだ国としての機能を失っている。各国の政策により、確実に数を減らしているが、フォルティア共和国をはじめ、悪魔の繁栄を黙認している国も少なからず存在している。  また悪魔の中には、人を喰らう個体も確認されている。それらは”人喰い”と呼ばれ、懸賞金をかける国や、生け捕りを試みる国が後を絶えない』  千晴が、以前読んだ本に書かれていたことだ。随分と酷い事が書いてある、と疑いながら読んでいた。もしそんな存在がいたとしたら、とっくに人間は滅んでいるのではないか。そう考えていたが、実際にすれ違い、驚かずにはいられなかった。
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