第二話

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 やつら、とは西に位置するカルマリア国のことだ。カルマリアは研究国家で、数年前から悪魔を積極的に捕らえるようになった。そのことはヴィヴィも知っており、今以上に自由が利かなくなることを恐れている。  「大丈夫だよ、さすがに東区には手を出せないと思うし」 アルシェル自身、なんの根拠もない、言葉だった。実際に西区は占領状態にある。しかし、ヴィヴィの表情を見て、そう言わずにはいられなかった。  「アルもフォルティアに住めばいいのに。ヨブさんたちと一緒に。そしたら私の心配事は一つきえるわ」  ヨブとは、アルシェルの家族のような存在で、現在一緒に暮らしている男だ。アミーと言う一人の娘がいる。  「安全にはなるんだろうけどね。僕は森を守りたいから」  数年前、アルシェルが生まれた国の悪魔は、故郷を捨て、森へ逃げた。その森の存在は外部に漏れることなく、今日まで繁栄し続けている。アルシェルはその場所を文字通り命がけで守っていた。  「お待たせしました。アルちゃん、鞄持ってきたよ」  奥から大きな鞄を抱えて、銀髪の少女、アンナが現れた。アンナはヴィヴィの七つ下の妹だ。柔らかそうな髪をツインテールにし、ヴィヴィと同じような服を着ている。  「ありがとう、アンナ。ヴィヴィ、いくら?」  「いいわよ。生存確認できただけで満足」  いいから、と財布からお札を取り出し渡す。ヴィヴィはしぶしぶ受け取った。  「マリアも心配してたわ。暗くなる前に顔だけでも見せに行ってあげて」  「そうだね。また何かあったらよろしくね。アンナも」  そう言って店を後にし、ヴィヴィの言う通り、セントラルに住むマリアのもとへ足を進めた。
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