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第三話
目が覚めた時、窓の外は薄暗かった。暗く見慣れない部屋で、千晴は頭を整理する。秒針の音がするたびに、眠っている頭が目覚めてくる。千晴は飛び起きた。
「今何時っ」
慌てて時計を確認すると、時計は六時を過ぎていた。間違いなく午後だ。慌てて電気をつけ、あたりを見渡す。床には、メリザが置いたままの位置に荷物が転がっている。ふと顔を上げると、姿見に映る自分と目があった。ポニーテールは崩れ、スーツはしわだらけだった。
慌てて、床に転がるハンドバックから櫛を取り出し、結び直す。キャリーケースを乱暴に開け、服を引っ張りだし、着替えた。
ドアを開け、顔を出す。静かな廊下だ。千晴はメリザを探しに、先ほど教えてもらったメリザの部屋に向かって歩く。
すると、ゴンっと鈍い音がした。その音と同時に千晴は、額に痛みを感じる。千晴は、お昼にも似たような痛みを感じたことを思い出した。
そのドアがゆっくり元の位置へと戻る。そこにはメリザでも、ナナキでもない男が立っていた。
「・・・・・・ああ、悪かったね」
低い声色で、のんびりとした口調だ。ラフな格好で。ぼさぼさの黒い髪をかきながら、あくびをしている。メリザよりも背が高い。
「こちらこそ、すみません。えっと、もしかして」
千晴は、三人目の同居人だと確信した。
「ああ、君・・・・・・メリザが言ってた」
「はい。橘千晴です」
「そう、橘千晴。・・・・・・俺はタタラ」
「タタラさん。これからよろしくお願いします」
千晴がお辞儀をすると、タタラはもう一度あくびをして、階段の方へ歩いて行った。タタラの後ろ姿を見送り、振り返ると、メリザが立っていた。先ほどと同じスーツ姿だ。
「あ、メリザさん」
「大きな音がしたからね。おでこ大丈夫?赤くなってるけど」
メリザの問いに千晴は、笑いながら、大丈夫です、と答える。
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