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「悪魔っていう種族なんだけど、その表情から見るに、何か知っているね。まあ、でも、真世界に流通する本は嘘が多いっていうし、結構尾ひれがつくからね。悪魔はそんなに、恐れる存在じゃないよ。むしろ、そんな悪魔を平気で殺していく、人間のほうが恐ろしい。でも、だからと言って安全な存在ってわけじゃない。街に住む悪魔に危険はないんだけど、東の方に住む悪魔には、人間に恨みを持つやつが多いから、近づかないほうがいい。ちなみにさっき言ってたマリアも悪魔の一人だよ。危険がないどころか、本当に普通の人だから安心して」
「マリアさんも」
悪魔を恐れたが、メリザが信頼しているマリアも悪魔ということを聞き、少しほっとする。あの本はでたらめだったのか。現に今すれ違った悪魔も、普通に歩いていた。
千晴は悶々としていたが、二人でたわいのない話をしながら、研究所へと戻った。
「今日はもう遅いから休んでね。仕事の話はまた明日するから」
「はい、おやすみなさい」
おやすみ、とメリザは自室に戻った。
***
カーテンの隙間から射しこむ光で目が覚めた。ゆっくり寝がえりをうち、時計を見る。七時二十分。アラームが鳴るちょうど十分前だ。
起き上がり、背伸びをする。久しぶりのすっきりとした目覚めに、顔がほころぶ。初出勤にはもってこいの目覚めだ。身支度を整え、廊下に出る。
ちょうどすれ違うように制服を着たナナキに出会った。
「おはようございます。その服装、今日は学校ですか?」
「そうだよ。行かなきゃ先生に怒られるもん」
けだるそうに返事をし、千晴の横を通り過ぎていく。
嫌われているのか、千晴は少し不安になる。何か気に障ることをしてしまったのかと考え込む。すると、後ろから声が聞こえた。
「ナナキの態度の事なら気にしないでね。誰にでもああだから。特にタタラに対してはもっとひどいし」
「メリザさん。おはようございます」
目覚めた時より、少し下がったテンションで言う。
「おはよう。下で朝食を食べようか」
千晴は返事をし、メリザについて行く。一階にあるソファーに座って、パンとコーヒーを食べた。
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