第五話

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 「だから、千晴ちゃんは、その孫だってこと、あまり言わないほうがいい。利用されてしまうかもしれないから」  千晴は頷く。その様子にメリザは大事なことを思い出したようで、話を付け足す。  「そうだ、千晴ちゃんにはもう一つ頼みたい事があるんだった」  「お仕事ですか?」  「そう。実際に見たほうが早いね。ついてきて」  メリザは立ち上がり、歩き出す。千晴もそれについて行った。 メリザが進んだのは、地下へと降りる階段だった。ゆっくりと降りていく。地下にはシャワールームがあり、千晴も昨夜降りたが、メリザはさらに奥にある戸棚に近づく。その裏に隠されたドアを開け、奥に進むと、薄暗い空間が広がっていた。  千晴は秘密基地ともいえる空気感にテンションが上がった。  「ミラ。見て、連れてきたよ」  メリザは唐突に口を開いた。千晴はその光景に息を飲む。  壁の端から端まで、鉄格子がかかっている。行き来できるように作られたドアと言える場所には鍵がかかっている。鉄格子のなかに置かれている簡易ベッドに腰を掛けているのは、見たことがないほどの綺麗な金髪に、真っ赤な目。  シンプルなワンピースから見える細すぎる手足は、かなり色白い。そして人形のように美しい顔をしていた。もっと派手なドレスを着ていたら、囚われのお姫様、と言う言葉が似合うだろう。  ミラ、と呼ばれた少女は無表情のまま、千晴を見ている。  「ミラ、仲良くするんだよ。今日から君のお世話をしてもらうんだから」
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