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その言葉に、我に返った千晴は慌てる。
「え、お世話って、この子は」
「この子はミラ。細いし、小さいけど、十六歳でナナキと同い年。この子の食事とか、まあ、面倒を見てほしい。大事な子なんだ。僕にとっても、この国にとっても」
千晴は、改めてミラを見る。大事な子、と呟きながら、恐る恐る名前を名乗った。
「ねえ千晴ちゃん。本で読んだかな、十字架の事、悪魔に滅ぼされた国の事」
千晴は肯定する。確か十字架はカルマリア国が所有しており、悪魔に滅ぼされたのはフランジスタ王国。その二つがどう関わっているのかいまいちわからなかった。その様子を楽しみながら、メリザが口を開く。
「この子、ミラは、本名”ミシェラ・ブラウン・フランシス”。フランジスタ王室の最後の生き残りにして、赤の十字架を所有する者。ついでに言うなら、赤目の持ち主」
千晴は息が止まった。メリザは笑顔で話を続ける。
「なぜカルマリアが所有していた十字架を、フランジスタの元王女様が持っているのかはわからない。何を聞いても答えてくれないからね。今はそれも調べている。千晴ちゃん、この子の存在は、誰にも言わないでね。もちろん、研究所の人たちにも」
千晴は頷くしかなかった。赤い目と目が合う。睫の長い綺麗な目。その目は何も映していない、真っ暗な闇のようだった。
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