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メリザの口調は優しいものだったが、その内容は恐ろしかった。もともとこの国は、合併によりつくられた国で、セントラルと言われる中央区を中心に、北区、南区、西区、東区とあり、それぞれが独立的と言っても過言ではなかった。戦争の多い北区、移民の多い東区、カルマリア国に占領された西区、南の方には海がある。
「まあ、西区に限らず、セントラルからは出ないほうがいい」
メリザの言葉に、千晴は頷いた。
この国のことを話していると、あっという間にメリザの研究所に到着した。
「ここが僕の研究所、通称mery's研究所」
少し年季の入った、その建物は、白を基調とした、二階建ての建物だ。格子状の窓がおしゃれに見え、あまり研究所という感じはしない。
「わあ、おしゃれですね」千晴は目を輝かせながら言う。
「とにかく先に、千晴ちゃんの部屋に案内するね。荷物も置きたいだろうから」
キャリーケースに、リュック、そして小さなハンドバックと、ボストンタイプの鞄。千晴の荷物は多かった。そのほとんどをメリザが持っている。
茶色いドアを開け、中に入る。外からの印象より、広く感じた。正面が壁になっており、そこには重厚な額縁に入れられた絵が飾ってある。右手には数人ほどで使える応接ルームが見えた。
こっちだよ、とメリザは左手に進む。角に沿うようにソファーが置かれ、そこを曲がると、ちょうど正面の壁の裏側へ来た。そこはデスクが並んでいたり、書類が積まれてあったりと、研究所らしい空間だった。
「今日はお休みでね、みんなはいないんだけど、ここに住み込んでるのが僕のほかに二人いる。たぶん自室にいると思うんだけど」
メリザはその二人を探しているのか、控えめにあたりを見渡した。しかし、人の姿は確認できず、再び歩き出す。この部屋の一番奥にあるドアの前まで来た。メリザがドアノブに手を掛けようとした瞬間、ガチャ、とドアが開いた。
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