第一話

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 「あれ、先生。おかえりなさい」  少年は、驚いたのか、大きな目を見開きながら言う。メリザの髪色よりさらに明るく、オレンジに近いショートヘアは規則正しく外に跳ねていた。幼さはあるものの、整った顔立ちの少年は、千晴の背より、少しだけ低い。  「ただいま。ちょうどよかった、昨日言っていただろう。この子が真世界から来た、千晴ちゃん」  千晴を手で指しながら、説明する。千晴は、名前を名乗り頭を下げた。  「ふうん、頭悪そうですね」  千晴は耳を疑った。自分のことを頭のよさそうな顔と思ったことはないが、初対面の少年に言われるとは思っていなかった。  メリザは、その反応には慣れているのか、小さくため息をつき、話を続ける。  「で、こっちはナナキ。今十六歳だから、千晴ちゃんより二つほど年下になるね。さっき言ってた、ここに住み込んでる一人だから、仲良くしてやって。ちなみにまだ学生だから昼間はいないことのほうが多いかな」  「よろしくお願いします」千晴はもう一度頭を下げた。  「それより先生、こないだ出席日数足らなくてレポート書かされてるって言ってたじゃないですか、もうすぐ書き終わるんで、終わったら見てもらえませんか」  ナナキは千晴との会話をそうそうに終わらせ、メリザに問う。千晴への対応とは違い、目を輝かせ、生き生きしていた。  「ああ。見てはあげるけど、ちゃんと出席するんだよ。それと、千晴ちゃんとも仲良くね」ため息交じりに言う。  ナナキは嬉しそうに、去っていった。その背中を見送ると、メリザが口を開く。  「ごめんね、悪い子ではないんだけど、ちょっと複雑な子だから。あ、ちなみにもう一人の方は僕と同い年で、ナナキよりは社交的かな。無口だけど。」  「社交的で無口な人・・・ですか?」  「まあ、会えばわかるさ」  自分の説明に矛盾を感じながらも、笑いながら話を続ける。ドアの奥には二階へ上がる階段と、地下に下る階段があった。  「この階段を上ると居住スペースになってて、千晴ちゃんの部屋も二階に用意してるから」  そう言って千晴のキャリーケースを持ち上げ、階段を上っていく。  
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