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「あれ、先生。おかえりなさい」
少年は、驚いたのか、大きな目を見開きながら言う。メリザの髪色よりさらに明るく、オレンジに近いショートヘアは規則正しく外に跳ねていた。幼さはあるものの、整った顔立ちの少年は、千晴の背より、少しだけ低い。
「ただいま。ちょうどよかった、昨日言っていただろう。この子が真世界から来た、千晴ちゃん」
千晴を手で指しながら、説明する。千晴は、名前を名乗り頭を下げた。
「ふうん、頭悪そうですね」
千晴は耳を疑った。自分のことを頭のよさそうな顔と思ったことはないが、初対面の少年に言われるとは思っていなかった。
メリザは、その反応には慣れているのか、小さくため息をつき、話を続ける。
「で、こっちはナナキ。今十六歳だから、千晴ちゃんより二つほど年下になるね。さっき言ってた、ここに住み込んでる一人だから、仲良くしてやって。ちなみにまだ学生だから昼間はいないことのほうが多いかな」
「よろしくお願いします」千晴はもう一度頭を下げた。
「それより先生、こないだ出席日数足らなくてレポート書かされてるって言ってたじゃないですか、もうすぐ書き終わるんで、終わったら見てもらえませんか」
ナナキは千晴との会話をそうそうに終わらせ、メリザに問う。千晴への対応とは違い、目を輝かせ、生き生きしていた。
「ああ。見てはあげるけど、ちゃんと出席するんだよ。それと、千晴ちゃんとも仲良くね」ため息交じりに言う。
ナナキは嬉しそうに、去っていった。その背中を見送ると、メリザが口を開く。
「ごめんね、悪い子ではないんだけど、ちょっと複雑な子だから。あ、ちなみにもう一人の方は僕と同い年で、ナナキよりは社交的かな。無口だけど。」
「社交的で無口な人・・・ですか?」
「まあ、会えばわかるさ」
自分の説明に矛盾を感じながらも、笑いながら話を続ける。ドアの奥には二階へ上がる階段と、地下に下る階段があった。
「この階段を上ると居住スペースになってて、千晴ちゃんの部屋も二階に用意してるから」
そう言って千晴のキャリーケースを持ち上げ、階段を上っていく。
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