離れていても俺はあなたにキスをする

2/4
23人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
離れていても俺はあなたにキスをする(荒神堂遥 目線) くちびるにくちびるがふれた。 硬質に見えるのに ほどけるようにやわらかく ふわりとしているが、 やはり芯のある強い口づけは あまり激しさを持たない。 ほんの少し触れ、 磁石が引き合うように どんなに北と南に離しても 寄り添わずにはいられないように 重なっていく二人。 「遥」 天鵞絨(ビロード)のように 滑らかで光沢のある声は さやけさを持ち あくまで涼やかで 私の肌をなぞる。 華やかさと気品、典雅 にも関わらず どこか野蛮で奔放で無頼。 貴公子然とした仕草から垣間見られる たまらない色香に どれだけの女が狂わされてきたのか。 私は、ただの小娘に過ぎない。 男性経験が、のみならず。 人生全般に厚みがない。 なのに美國千都の、 この 溶けるように甘い瞳を 星星が煌めく宇宙みたいに深い眼差しを 私は今、独り占めしていた。 「遥」 蠱惑的な声と 甘やかな眼差しと 誘い水のような指先に 濡らされていく。 「や…あの、あのっあのっ」 「聞かないから」 ばっさりと打ち消された。 「恥ずかしいのか」 「うん」 「うんって////」 髪を愛しげに撫でる、
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!