好きになるの、待ってる

3/3

23人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
「いや!ありえないから。 カメラとか回してませんか?」 「朝から愉快だが、人生は事実より希なりだ。 そろそろ、俺と登校する生活になれようか」 「二日目です」 「二回半だ。 幸運の女神様は、前髪しかない」 「ソフトモヒカンですか?」 「俺はお前のスピード感と、ひねりが大好きだ」 「変態扱いですか」 「前例がないと認めないのは、頭が堅い証拠だ」 「ありえないんですよね。 かっこいい転校生が、いきなり、私に付き合ってというのは」 「お試し5日間なんだが、すでに半分すぎたな。 早く前髪をつかめ」 「いや。貧乏な3LDK、 サラリーマンとパートタイマーの間に生まれ 成績平均・運動神経はある時はある、無いときはなく。 そんな私と美國千都。 辛すぎですよねー。 ギャグ満載ですよ」 「お前、ちょい、太陽に手を伸ばせ」 「は」 私は腕を引っ張られた。 その指の隙間を美國千都の指先がなぞる。 「赤い」 「はい」 美國千都も手を伸ばした。 「赤い」 「うん」 手を重ねられた。 「ぎゃあ!」 「お前は頬も赤い」 「うわわわわわ」 「流れている血は、同じように赤く、同じように熱いのに お前は俺を差別する」 「…」 「カースト?階級? ヒエラルキー? 陳腐でわかりやすい発想だ。 お前は、そういうのを軽くぶちこえてコミュニケーションできると信じてたが」 美國千都は、目を眇め 静かに笑う。 「好きになるまで」 「…」 「好きになるまで待ってる」 「…」 「好きになるまで諦めない。 好きになったら離さない」 「……」 「俺の本気、お前に届くまで」 太陽に伸ばされた手 重ねられた千都と私の手 千都は、私の指の隙間に指を入れ、抜けないように握りしめた。 「ずっと、こうしてやる」 「み、美國さん!?」 「『千都』さん」 「せぇ、せぇ、せぇ」 「せっくすがしたいのか」 「したくない!」 「ははは」 美國千都は首を傾げ、笑った。 「もう一度、イギリスに戻ることになった。 いわゆる、『エンド』だ」 重ねた手のまま、腕を下げ 私に、そっと寄り添う。 「蒸留酒を醸すのに時間がかかるように」 「…」 「好きになるの、待ってる」 「…」 「空は平等にあり、血は同じように赤く、俺はお前を愛し続ける」 「……」 イギリスに… 「大人になったら、また会おう」 「……」 「卑屈になるな、女になれ」
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加