Short vacation.

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 素直に悦ぶ年若い恋人の躰を思う存分堪能し、藤堂が熱を解放する頃にはもう、啓悟はぐったりと半ば意識を飛ばしているのである。  朦朧とした意識の中で、啓悟が小さく呟く。 「とぅどぉ…、好き…」   ◇   ◆   ◇  翌朝。隼人の手によって並べられた朝食の席に、啓悟の姿がなかった。片割れである藤堂へと、視線が集まるのは当然の事である。 「啓悟は寝坊かな?」 「ああ。浮かれすぎて疲れが出たんだろう。出掛けるまでには起こすさ」  シレッとフレデリックに返して、藤堂は優雅に紅茶を啜った。明け方まで抱き潰していたなどとは口が裂けても言うつもりはない藤堂だ。 「啓悟はいつもみんなの事を楽しませようと頑張ってくれるからね。疲れちゃうのも仕方がないかな」 「そうだな」  穏やかに微笑むフレデリックである。その隣で、寝起きの悪い辰巳がぼそりと呟いた。 「俺の事もわざわざ起こすんじゃねぇよ」 「何を言うんだい辰巳。キミは、こういう時くらいは規則正しい生活をした方がいい」 「はぁん? だから起きてやってんだろぅが」  渋い顔で言う辰巳に、苦笑を漏らしたのは甲斐だった。 「辰巳の場合は、むしろ時差があった方が元気なんじゃないのか?」 「馬鹿言ってんじゃねぇよ。俺ぁ朝が嫌いなんであって、時差の問題じゃねぇ」 「確かに…辰巳はどこにいても朝方に寝るよね」     
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