366人が本棚に入れています
本棚に追加
とは言え、辰巳のような家業の人間がサブカルチャーと縁遠くても、それはそれで致し方のない事かも知れなかったが。
辰巳が隼人を見る。
「何だ婦女子ってのは」
「その…何といいますか…同性愛というか…男性同士のカップルが好きな女性が結構いらっしゃいまして…その方たちの総称といいますか…。ご婦人の”婦”ではなく、腐るという字を当てはめて”腐女子”と、そう呼ぶのですよ」
「あんだそりゃ」
啓悟の言う文字の違いは分かったものの、意味が分からないと眉根を寄せる辰巳に甲斐が苦笑を漏らす。
「知らない方が身のためだ辰巳」
「はぁん? まぁいいけどよ」
そうは言いながら、それでどうして写真など撮っているのかと小首を傾げる辰巳に、啓悟がニッと笑う。
「そりゃあSNSにアップするに決まってるじゃん。もちろん、顔は隠すけどね~♪」
既に撮影を終えた啓悟は、ソファに寝そべりながら撮った写真をその場で加工する。
「これで良し…っと。さあ腐女子ども、喰い付くがいい!」
頗る愉しそうに言いながら写真をネットの海に投下する啓悟は、とあるSNSサイトではちょっとした有名人である。何せ男同士で付き合っている事を隠していないのだ。その上、藤堂の写真をこっそり撮っては特定されないように加工を施してアップしているのである。
最初のコメントを投稿しよう!