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ものの数分でスマホを放り投げて上体を起こす啓悟を、辰巳が胡乱気な視線で見遣る。
「お前もロクでもねぇ事してんな…」
「いやいや辰巳さん、俺は世の飢えた腐女子に潤いを与えてるだけだよ」
「だからその婦女子ってのは何なんだ? お前のファンか何かかよ?」
いまいちピンと来ていない辰巳が渋い顔で問えば、啓悟は少しだけ考えるような素振りを見せた。
「ファン…まあ、あながち間違ってはいない…? 気もするかな」
適当な事をぬかす啓悟である。それに苦笑を漏らしたのはフレデリックだ。
「あのねぇ、辰巳。世の中には僕たちみたいに同性で愛し合う男を眺めたり想像したりして楽しむ女性がいるんだよ」
「あぁん? って事は、そのために写真撮ってたのかよ?」
「そそ。藤堂とフレッドとか、キッチンに並んで料理してたらそりゃ喰い付くでしょ」
啓悟の台詞に、思わずキッチンに立つ二人を見る辰巳である。
「……よくわかんねぇな」
「ふふっ、辰巳はそうだろうね。でも啓悟、分かってるとは思うけれど、万が一にも身元が特定されるような事がないように頼むよ?」
「もちろん。その辺は任せてよ」
自信たっぷりに言う啓悟は、これまでに一度たりとて身元を特定された事などなかった。当然、注意も払っている。
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