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成人した、それも男に過保護な…とは、誰も言いはしなかった。啓悟はともかく、隼人に限って言えば下手をすれば世界中に顔を知られている。
何もなくとも、備えがあることに越した事はないのだ。
そうして表に出た三人である。互いに写真を撮り合う啓悟と隼人を、辰巳は少し離れた場所から眺めていた。
辰巳などからすれば、何が面白いのかさっぱり理解できないというのが正直なところだ。それでも、海辺でカメラを向け合う啓悟と隼人が楽しそうな事に安心する。
住む世界が違おうとも、それを互いには理解できなかろうとも、友人たちには辛い顔よりも笑っていて欲しいと思うのは辰巳とて同じ事だ。もちろん、口には出さないけれど。
数十分程度で撮影を終え、戻ってきた隼人が頭を下げた。
「お手数をお掛けしました、辰巳さん」
「あぁん? 別に手間でも何でもねぇよ」
ぶっきらぼうに言いいながら頭をガシガシと掻く辰巳に隼人が微笑む。口が悪くとも、辰巳が優しい事は隼人も啓悟も知っていた。
「辰巳さんも撮らせてよ」
「冗談じゃねぇよ」
「あ。じゃあさ、ネットには上げないから後でみんなで写真撮ろうぜ!」
記念撮影だと言ってはしゃぐ啓悟に、渋い顔をする辰巳は写真など撮られることに慣れていない。
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