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イギリスで一度、フレデリックの養父にカメラを向けられたことを思い出し、内心で苦笑を漏らす辰巳である。どうも、このところ縁がない事が増えた気がしてならない。
ついでにツーショットも撮りたいなどと言う啓悟に、隼人が笑う。
「啓悟は、藤堂さんとの写真が欲しいだけでしょう?」
「バレたか」
「でも、私も甲斐との写真は欲しいです」
「じゃあ決まりだな!」
年若い友人たちの愉しそうな会話を聞きながら別荘へと戻れば、ちょうど夕食が出来上がっていた。
テーブルに所狭しと並べられた料理はどれも美味そうで、男どもの食欲をそそる。
「船で二か月で覚えたと言う割に、随分と手慣れているじゃないか」
「日本に来てからも、休日に料理教室に通っているからね」
「なるほど。道理だな」
旦那のために努力をするのは嫁の務めだと、そう言って憚らないフレデリックは自らそれを実践していた。
「辰巳の家では僕は料理をしないからね。こうして作るのもやっぱり楽しいよ」
「明日の朝食は、私に作らせてください。上げ膳据え膳では…気が引けてしまいます」
そう言ったのは、隼人である。
辰巳など一切料理など出来ないし、する気もないというのに気が引けるという隼人に、フレデリックが笑った。
「手伝いが必要なら、遠慮なく言ってね。辰巳の代わりに僕が手伝うよ」
「ありがとうございますフレッド。その時はお願いします」
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