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穏やかに微笑み合う隼人とフレデリックを眺めていた啓悟が、不意に口を開く。
「んでもさぁ、辰巳さんと甲斐さんに任せたら何が出てくるのかも…気にならない?」
如何にも食べられないものが出てきそうだとばかりに言う啓悟は、自分の不器用さをすっかり棚に上げている。
「おい啓悟、食いもんは粗末にすんなって、学校で習わなかったか?」
「っ…辰巳さん…それって墓穴掘ってんじゃん」
「はぁん? 俺はお前みてぇに出来ねぇ事を出来るフリはしねぇんだ」
「別に不器用なだけで出来ない訳じゃないっつーの!」
まるで子供の喧嘩のような遣り取りをする啓悟と辰巳に、甲斐が苦笑を漏らす。
「悪いが、俺も自信はないので出来れば遠慮したい」
「甲斐は料理などしなくていいんですよ。怪我をしたら大変です」
そう言って隼人が手を取る甲斐は、生まれながらにして財閥の御曹司である。家には使用人やメイド、専属の料理人までいるくらいだ。家事などするはずもない。
この六人の中で、ごく一般の家庭に育った者は、よくよく考えれば藤堂くらいのものだった。啓悟とて、父親は経営者だ。
「俺は時折り、お前たちと居ると頭が痛くなってくる」
「そういえばフレッドの家は、どんなご家庭なんです?」
「あ。それ俺も気になる」
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