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 千絵と待ち合わせたショッピングモールは、平日とあって閑散としていた。すれ違う顔は、自分たちと同じ主婦層や、暇を持て余した学生ばかり。ほとんどが女性だ。  由加里と千絵は、和風カフェであんみつセットを食べながら、夫の愚痴を言い合った。 「本当に腹立つことしかしないんだから」と、千絵は夫の行動について嘆く。「気が利かないし。こっちが言うまで動かないし」  学生時代の仲良しグループとは、いまだに交流が続いている。その中で、既婚者は由加里と千絵の二人だけ。未婚の友人には言いずらい夫婦間の悩みや愚痴も、互いになら打ち明けられた。  今日、千絵が由加里を誘った目的も、夫への不満を吐き出すためだった。  由加里のほうでも、千絵に訊きたいことがあった。  千絵の愚痴が一段落ついたところで、由加里は切り出した。 「あのさ、変なこと訊くんだけど、千絵の旦那さんって、結構毛が抜けたり……する?」 「毛?」  千絵は一瞬、きょとんとした顔をしたが、 「抜ける抜ける。朝起きると、枕にいっぱい抜け毛がついてたりするよー。なあに? 由加里んとこの旦那も、髪薄くなってきてる?」  すぐに興味津々といった表情に切り替わった。 「薄くっていうか……」  由加里は口ごもる。むしろ夫の毛が濃いことに悩んでいると、千絵に打ち明けてしまっていいのだろうか。 「仕方ないよ、どこの旦那もだいたいそうだって。女より男のほうが薄毛になりやすいみたいだし」千絵は励ますように言った。「年取ったらだいたいの男がハゲじいさんになるんだから、あんまり気にしないほうがいいよ」  すぐさま由加里は首を横に振る。「……違うの」   「違う?」 「そう、わたしが訊きたいのは髪の毛じゃなくて……体毛のほうなの」 「体毛」 「すね毛とか、下の毛とか」 「あー、あはは……」千絵は納得したように頷いた。「陰毛ね。掃除機かけた後でも、不思議とどっかからわいてくるんだよねー。生えてるときはなんとも思わないのに、抜けて床に落ちてるところ見ちゃうと、なんか間抜けだよね」  
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