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「遼輔はすごいねえ」  由加里は適当に、夫の喜びそうな相槌を打つ。 「そんな人の面倒見なきゃいけないなんて、わたしだったらとっくにブチ切れちゃってると思う。とてもじゃないけど、遼輔みたいな大人な対応なんて出来ないなあ」  そう言いながら、時計を気にする。 「あ、ねえ、ちょっとテレビ点けてもいいかな?」  学生の頃からファンを続けているモデルが、バラエティ番組に出演するのだ。 「いいよ」愚痴ったことでいくらか気が晴れたらしく、夫は穏やかな声で言った。 「ありがとう」由加里は急いでリモコンを手に取る。    テレビを点けると、夫は気を利かしたのか、静かに食事に専念し始めた。  進行役の芸人が発する明るい声が、リビングに響く。由加里はテレビを凝視した。目当てのモデル、キイナがひな壇の後列に座っている。キイナは共演者の発言に、肩を震わせて笑ったり、驚いた顔をして見せたり、ころころと表情を変えた。キイナ自身はあまり喋らないが、そこがいいと由加里は思う。でしゃばっていない感じが、いい。密かに番組に華を添えている。 「あ、この人……」キイナの顔がアップで映った場面で、夫が興味を引かれたように言った。「見たことあるかも」 「うん、CМとか結構出てるよ」 「女優だっけ?」 「モデル」 「へえ……」  もう一度アップになったキイナを見て、夫は呟いた。「でもさ、普通にブスじゃね?」 「え?」 「女から見たら、このモデルは可愛い部類に入るわけ?」 「うん、可愛いでしょう?」 「うへえ、俺にはちょっと理解出来ないわ」  それから夫は、キイナの容姿に駄目出しを始めた。 「何あの目、でかすぎて怖いんだけど。変でしょ、不自然すぎ。こういう人ってさ、やっぱ化粧で目を大きく見せてるの? アイプチってやつ? 目がでかければ可愛いとかさ、勘違いしてんじゃね? なんか全体的に濃いよね。暑苦しい顔してる。くどい。妙に前歯だけでかいし、顎短いし。このタイプの顎の人はさ、歳いったとき二重顎になりやすいんだよ。油断するとすぐ顎の下に肉がつくの。だからこのモデルも、劣化するの早いんじゃないかなあ」  
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