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朝、目が覚めると 部屋の中に妙な違和感を覚えた。 見飽きた天井、 散らかった窮屈な部屋 いつもと同じはずなのに 昨日とは何かが違っているような 得体の知れぬ違和感が背中を伝った。 近くにあった服を手繰り寄せ、 手早く着替えを済ませると 流れ作業のように化粧に取りかかる。 化粧台は、前の住人が置いていったものらしく、 古いのは確かだが、手狭なアパートには不釣り合いなほど立派なもので、なんとなく処分するのも億劫になり、そのまま使っている。 両開きの三面鏡を開ければ、 鏡の中には、どこか怯えたような自分の顔が幾重にも写ってた。 いつもより早く出勤を終え、早足に玄関へと向かう。 石造りのタイルにヒールを打ち付け、 ドアノブに手をかけたその瞬間、 この得体の知れぬ違和感の正体にようやく気づいた。 "反転している" 昨日まで右側に開けていたはずのドアに どうしてか、今は右側にドアノブが付いている。 慌てて振り返り、部屋を見渡せば、 家具の配置、窓の位置、部屋の間取りそのものが 鏡合わせのように反転している。 無意識に後退った体が、鈍い音をたてドアへとぶつかる。 背中を伝う、わずかな震動も無機質な冷たい温度も何もかもが気持ちが悪い。 気づけば、左側へ開いたその奇妙な扉から逃げるように部屋を飛び出していた。
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