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神棚の下のダンボールの中に今朝とったねぎが幾本か無造作に入れられていて、その横の米びつの上に口の空いた切り餅の袋が置いてあった。手を突っ込んで二つとり、コンロにかけた金網の上に放って火を点ける。ジリリッと青っぽい炎が湧いてきて、チリチリもちをいぶり始めた。
感傷を誘う火だ。目をとじるととりとめなく浮かんでは消える想像が、私へ叶わない夢を連れてきた。
祖母はよく、若いころのおじいちゃんはものすごい道楽好きだったのだと苦労話をする。
三味線から尺八から、釣りにパチンコ、料理に凝った時もあれば椿にこだわって庭中に植えたこともあったらしい。小さな庭とは言えど、それなりに金がかかって、その時は祖母は、質屋と家とを何度も往復したそうだった。今の彼だって布団の上で日夜を過ごす身でありながら、それでもまだわがままなのだから、きっと昔はそれはそれは奔放に、自由に、うつくしい人だったのだと思う。そして祖母はむかしから苦労人なのだった。
今は祖母は、今度は孫のために、娘と嫁の家へ足繁く通っている。
私は、その祖母の労のもとに搗かれた餅を菜箸でひっつかんで、そして乱暴にひっくり返した。
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